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ドラガリアロストを一通り遊んだのでレビュー – スマホとゲーム機の巨人が送り出す安定感のあるアクションゲーム

Author
古都こと
ふよんとえんよぷよぐやま!!!

先日ついにサイゲームスと任天堂によるゲーム「ドラガリアロスト」がリリースされました。リリース前の注目度は決して高くなかったのですが、現在ではAppStoreの無料ゲームランキング上位をキープしています。

私もさっそくリリース日にダウンロードして遊び始めました。とりあえず現時点で実装されているストーリーのNORMAL難易度をクリアしたのと、ドラゴンの試練上級をぼちぼちクリアできるようになってきたので、「一通り触れたかな」と思い、レビューを書こうと思い立ちました。

「神バハ」や「デレマス」などでポチポチゲーと罵られつつも着実に経験を積んでいき、「グラブル」「デレステ」「プリコネR」などを生み出すに至った携帯電話ゲーム界の重鎮サイゲームスと、この分野ではまだまだひよっこながらもコンシューマゲーム界では大きな存在感を誇る任天堂がタッグを組んで生み出したゲームは、どのように仕上がったのでしょう。

「ドラガリ」は安定感のあるゲーム

ドラガリアロスト(以下ドラガリ)は基本無料の見下ろし型のアクションゲームです。

「スマホでアクションゲーム」というと、私のような家庭用ゲーム機ファンは少しぎょっとする(タッチパネルでアクションゲームなんてできるの!?)のですが、本格的なスマホアクションゲームの歴史は意外と濃く、2010年には既にかの有名な「Infinity Blade」が登場しています。見下ろし型アクションゲームだと「Bastion」なども移植されていますし、近年では「Vainglory」のようなMOBAもどんどん増えてきています。基本無料タイトルなら「白猫プロジェクト」も外せませんね。

そんな歴史あるスマホアクションゲームの世界の中で、ドラガリはいったいどんな立ち位置になるのでしょうか。

結論から言うと、ドラガリは何か全く斬新な驚きを提供するタイトルではないものの、サイゲームスと任天堂という2柱の巨人の地力に支えられた、とても安定感のあるゲームに仕上がっています。

スマホで実現した正統派ゲーム

ドラガリはいわゆる「聖剣伝説」スタイルの見下ろしアクションゲームになります。平面マップを移動して、攻撃して、必殺技を撃って敵を倒す。懐かしさを感じさせつつも、私たちの中に残る子供のハートをゆさぶってくる、由緒あるゲーム形式です。

驚くべきことに、聖剣伝説とスマホとは、意外と相性がいいのです。きめ細やかな操作が要求されるプラットフォーマーや3Dアクションなどと違い、基本的に平面操作と攻撃さえ再現できれば、多少拙くとも「ゲーム機」で可能だった体験をほぼ完全に実現することができるからです。

また、スマートフォンの巨大化も追い風になっています。毎年毎年「北米人は手が1メートルあるのか?」と思うような機種が次々と発表されますが、スマホがある程度大型化すると自動的に操作性は上がります。

しかしそれでもスマホ向けのチューニングを完全に放棄できるわけではありません。見下ろしアクションは歴史もあり競合も多い分野です。手を抜いて作れば他のゲームに客を逃がすでしょう。

ドラガリはその観点から見るとかなり優秀に作られています。移動やダンジョン探索を軽くまとめ、戦闘の要素を「面白い」と感じるエッセンスのみに厳選し、ゲームテンポもスマホに合わせた調整がなされています。「これは立派なひとつの”スマートフォンゲーム”なのだ」という心意気を感じます。

ドラガリのダンジョン探索はかなり簡易なものとなっています。1フロア十数秒もあれば端から端まで歩くことができます。もちろん道中で敵との戦闘や宝箱、分岐があるので移動にはある程度の時間がかかりますが、全体として短くテンポよく、だれることなくゲームを楽しむことができます。そして探索が終われば待ちに待ったボスとの戦闘。渾身の技でぶっ飛ばしてやりましょう。

移動操作は「スライドしてホールドした方向に動き続ける」というよくあるもので、普段からスマホでゲームをしている人はすんなり馴染むでしょう。妙なラグやモーションもなく、キャラクターをまるで自分の手足のように動かすことができます。

ただし少し癖があり、移動方向の反転時に中心点がずれます。この「中心点ずれ」は意外と致命的で、ボス戦などでは激しく上下左右にうごくため、操作にちょっとした違和感を感じることがあります。操作の違和感というのは、ほんのちょっと、ほんのすこしあるだけで、感覚がゲームから現実に引き戻されることもあります。正直このあたりは早めに対処するか、オプションで変更できるようにしてほしいですね。

戦闘のテンポはかなり遅め。自分の攻撃硬直はそこそこ長く、攻撃を連打しているとあっさり敵の攻撃を受けます。ただし敵の攻撃も大ぶりで、中規模以上の技には「範囲予告」が出ます。それでも実際に操作しているとスピーディに感じるレスポンスの良さとエフェクトの作りには感心します。「モンハン」はアクションゲームながらよく「ターン制バトル」と形容されたりしますが、あれに近い感覚です。

この一見スピーディながらも鈍重なシステムは、ドラガリを「ただ派手で賑やかなゲーム」から「製作者とプレイヤーの真剣勝負」に昇華させる役割を持っています。死んだ目でスマホをぽちぽちするのではなく、熱意と根性を持ってゲームに向き合ってほしい、という強い意志を感じます。

しかし、攻撃技の「ぶっぱ」が通用しないかと言うと、全面的にそうと言うわけではなく、必殺技には無敵時間がついていたり、ドラゴン化すればダメージは受けずに一方的に殴れるなど、気持ちよく適当に技を振る楽しさというのも残されています。

ドラガリは画面の向こう側にいる製作者を乗り越える正統派のゲームだ、と言うことができます。ただ、これは良いことばかりでもなく、アクションゲーム初心者にとってのとっつきやすさを犠牲にする可能性もあります。また、「スマホでは軽くゲームを遊びたい」という層にも優しくないでしょう。そんな「重い」ゲーム、世の中は本当に望んでいるのか?と疑問も出てきます。

ですが世の中は「より濃く」「より高級な」ゲームへと注目が移り変わりつつあります。現代においてスマホで「怪盗ロワイヤル」を求める人は前ほど多くはありません。本格的なゲームが集まるプレイステーション4は世界中で記録的な大ヒットを飛ばしています。様々な理由から「日本では絶対に売れない」と言われていたTPSというジャンルはいまや「スプラトゥーン」のおかげで最大派閥です。「家庭用ゲーム機の躍進で滅ぶ」と言われていたPCゲームはむしろ好調です。地球人総ゲーマー化の時代です。そんな中でドラガリは、どう受け入れられていくのでしょうか。

ソロゲーとして、マルチゲーとして

ドラガリは一人でもプレイできるゲームですが、各クエストにマルチプレイも用意されています。

ひとりで無理なときはみんなで

ソロとマルチでクリアフラグは共通で、ホストでなくゲストのときでもクリア扱いにしてくれます。

このゲーム、味方AIがかなり役立たずのバカなので、高難易度のクエストは基本的にマルチでの攻略になると思います。しかしルーム機能も貧弱で、入室条件は指定できません。入れる人は全員入ってくる闇鍋状態です。

ルーム機能が貧弱すぎて、kickしたされたの不毛な争いが繰り広げられないのは利点ではありますが……

ソーシャルゲームとしてのドラガリ

ドラガリはアクションゲームであると同時に、ソーシャルゲームの流れをくむゲームでもあります。継続的なログイン、クエストの周回、ガチャ。そういった要素の快適性を無視してこのゲームを評価することはできません。

しかしそこは「プリコネR」のサイゲームス。抜かりはありません。プリコネはプレイヤーが同じ画面を何百回も見て、同じボタンを何万回も押すことを前提に作られたゲームです。UIは豪華で快適に、迷わないように。それと同じ魂がドラガリにも引き継がれています。

ただやはりプリコネと比べるとどちらかというと大人しく、典型的なソーシャルゲームのUI/UXに収まっている部分も多くあります。それでも豪華と軽快さを両立させているところは同じです。

よく見る「ソシャゲのUI」を採用

そして「スキップチケット」も、もちろん実装されています。これは一度クリアしたクエストを「クリアしたことにして報酬だけ受け取る」ことができるチケットです。昨今のゲームでは珍しくありませんが、あるとないとでは大違いです。

最近のゲームでは気にする人の多い、低レアキャラのケアもバッチリです。プリコネやFEHと同じく、キャラのレアリティは後であげることができるので、低レアキャラも使っていけます。たぶん。

低レアキャラもいつかは星5に……

ただ、レアリティ上げの素材の要求量がきついのと、素材の入手方法がきわめて限られているのが難点です。

また、古戦場やクランバトルのような、いわゆる「GvG」は今のところ存在しません。私としてはこの方が気楽でいいのですが、GvGがないとモチベーションを保てない人もいるでしょう。

ひたすら渋いガチャ

基本無料ゲームといえばガチャ……なのですがドラガリはめちゃくちゃ渋いです。キャラ、ドラゴン(装備)、護符(装備)のごちゃ混ぜガチャしか存在せず、最高レアリティのキャラの排出率はなんとたったの1%です。かのFGOと同じです。

一応救済措置は存在し、ガチャを引いて星5を引けなければどんどん星5率が上がっていくというのがあります。でも結局ごちゃ混ぜガチャなのでキャラを引けるとは限らず……。

このガチャの渋さだけはどうにかならんかなあと思いつつ、向こうも商売なので儲けたいよね、仕方ないよね、と自分を無理やり納得させています。

ストーリーは平凡

ドラガリにも一応ストーリーはあるのですが、それが面白いかといえば、特に面白くもなく、あってもなくても変わらないぐらいです。

神バハやグラブルも初期のストーリーは平凡で、サービス開始後しばらくしてからのイベントが本番、という感じだったので、ドラガリも同じような経路を辿ると思います。

このあたりは今後に期待ですね。

サービス初期ゆえのコンテンツ不足

基本無料タイトルのサービス開始直後の典型的な問題なのですが、このゲーム、現時点ではやることがあまりありません。

ストーリーのHARDモードが用意されていたり、ドラゴン戦はかなり上の方まで難易度が存在するなど、目標は見える形になっているので、一応は目指す先は見えます。ただ、それまでの間ひたすらレベル上げだけを繰り替えすというのは、なかなかに大変です。

難易度はかなり上まで用意されている

今のグラブルのように日課が多すぎてわけがわからないという状態になるとそれはそれで困るのですが、やはりある程度やることは欲しいですね。

ストーリーの追加やイベントの開催を待ちましょう。

DAOKOのボーカルが支えるふんわりした世界

ドラガリは各所にDAOKOのボーカル曲を採用しています。タイトル画面、ボス戦、そしてガチャ画面まで。

ゲームのBGMにボーカル曲を押し出すのはどうなのかな、と思っていましたが、DAOKOのウィスパー系ボイスが、いい感じにふわふわしたファンタジー感を演出してくれます。

それでもボーカルが邪魔になる、という人は、ボーカルだけをオフにすることもできます。

多くのゲームの中のひとつとしてのドラガリ

ドラガリが素晴らしいゲームであることは間違いありません。熱意のこもったシステム、快適なUI、かわいいキャラクターたち。どれを取っても一級品です。

しかし見下ろしアクションゲームというのはすでに世に溢れています。AppStoreを開けば「聖剣伝説2」や「Transistor」といったゲームが1000円もせず安くで買えるのです。

そして当然「白猫プロジェクト」の存在もあります。ドラガリは多くのことを成し遂げましたが、その中のほとんどは白猫プロジェクトですでに実現されていたことです。

ドラガリというゲーム単体で見ると大きな価値がありますが、世に存在するゲームの中からドラガリを選ぶ理由というのは弱いと感じます。

数多くの優秀な見下ろしアクションが跋扈する現代で、「ドラガリならでは」「ドラガリでないと体験できない」というセールスポイントを用意できないのは、少々厳しいのではないかと思います。「ガチャ回す金で聖剣伝説2買ったら?」と言われたらそれで終わりです。

ただ、売り切りゲームとは違い、基本無料でサービスを続けていくゲームであるので、いくらでも改善して魅力を用意することはできるはずです。今後に期待しましょう。

まとめ – 飛び抜けた部分はないが安定して魅力的

ドラガリは純粋にまっすぐなゲームです。ひたすらスマホ向けアクションゲームを磨き上げた先にある、純度の高いゲームです。洗練されたシステムやUIに触れてるだけで楽しくなる、れっきとしたゲームに仕上がっています。

しかし全体的に安定してハイクオリティにまとまっている一方で、「ドラガリならでは」の魅力には乏しく、他のゲームと天秤にかけられたときに選ばれるかどうかというのは怪しいところです。

ガチャの確率やコンテンツの乏しさなど問題もありますが、売り切りのゲームではないのだから、それは今後改善されていくでしょう。

この魅力的なゲームを生かすも殺すもサイゲームスと任天堂の行動次第です。今後の展開を見守りましょう。