Subterranean Flower

この1年間でVRゲームを50本ほど遊んだので、VRの現状とか感想とか

Author
古都こと
ふよんとえんよぷよぐやま!!!

VR元年が謳われた2016年から1年が経ち、2017年になりました。つまり、私がHTC Viveを購入してから1年経つということでもあります。

半年前、私は「半年間VRゲームを体験した感想とオススメのVRゲーム」という記事を書きました。VRの体験記事はいまだ貴重なようで、多くの方に読まれています。

さて、それから半年。VRを取り巻く環境は、全く変わらない部分もあれば、大きく変わった部分もあります。私自身も、あれから多くのタイトルに触れて、意見が変わったところもあります。今回はそのあたりのことにも触れつつ、この1年間でVRに抱いた雑多な感想などを書いていきたいと思います。

VR体験とすぐに解ける魔法

ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、モーショントラッキングコントローラ、ルームスケール、これまでゲームの世界には積極的に持ち込まれてこなかった技術が、VRでは利用されています。そのうちどれもがプレイヤーがゲームへ没入することを支援し、今までのゲームでは得られなかった臨場感をもたらしてくれます。

VRという魔法は我々に新しい感動を届けてくれます。……初めのうちは。

これは前回の記事でも書いたので、その繰り返しになるのですが、新しい技術というものは初めのうちは新しい体験をもたらしてくれますが、そのうち新鮮さは磨耗し、ただの平凡なデバイスに見えてくるようになります。

半年でも新鮮さは随分と薄れたのに、1年経つとなるともはやVRから新しい感動を受け取ることは不可能です。ですが、それはVRに価値がないという意味ではありません。前回の記事に書いた通り、そこから初めて本当の価値が出てきます。

しかし、魔法が解けてしまったVRで、私たちは十分に楽しむことができるのでしょうか?

結局どんなゲームが遊べるかが一番重要

たしかにVRデバイスは素晴らしい技術の集合体です。しかしハードウェアはそれ単体ではあまり意味を持ちません。どんなゲームが出るか、ということが極めて重要となってきます。面白いゲームさえあれば、VRは私たちを楽しませてくれるはずです。

はっきり言って、半年前の2016年10月では、あまりゲームが充実していたとは言えませんでした。しかし、さすがに1年も経つと、ある程度選択肢が増えてきました。Steamで調べてみると、現在VR対応タイトルの数は1171タイトルとなっています。

私はその中から約50本ほどを購入・プレイしました。1171タイトルの中から50タイトルというと、明らかにサンプルとして不十分ではありますが、ある程度最低限のVRゲームに触れた人として、ひとつの参考にはなると思います。

躊躇する大手、出ないゲーム

ゲームの花形といえば大手企業が作るAAAタイトルです。アサシンクリードやグランドセフトオートなど、私も大作タイトルにはいつも楽しませてもらっています。しかしとても残念なことに、大手企業は現在のところVRに全く乗り気ではありません。AAAタイトルどころか小規模タイトルすらも作らず、仮に作られても「VRデモ」に毛が生えた程度の貧弱なゲームの提供にとどまっています。

AAAタイトルの存在しない市場など、もはや廃墟も同然です。大手が力を入れないのなら、一体誰が市場を支えるのでしょう?唯一、Ubiは少し頑張っていますが、その質は……いや、やめておきましょう。しかも、サードパーティがソフトを出さないならまだしも、ValveですらろくにVRゲームを作っていないというのが現状です。VR2年目にして、すでにシャッター街めいた雰囲気を醸し出しています。

UbisoftのVRタイトル、Eagle Flight。グラフィックは作り込まれているが…

もちろん会社にも事情があって、まだ規模の大きくないVR市場に投資するのはリスクが高く、VR向けにゲームを作るのはなかなか困難となります。VRを捨てて普通のゲーム機・PC向けにゲームを出せば数百万本・数千万本売れるのですから、そちらに力を入れるに決まっています。しかし一介のエンドユーザーとしては、何もない砂漠に放り出されたような気分を味わうこととなり、やり場のない怒りを味わうことになります。

BethesdaはFallout4をVR対応させると明言していたり、RocksteadyはBatman ArkhamシリーズのVRゲームを開発していたり、すべての企業にまったく無視されているというわけでもないのですが……。

今のVR市場を支えるのはインディーズ?

しかしそんなVR市場にも救いはあります。いわゆるインディーと言われる企業・個人がある程度力を入れてくれており、遊ぶゲームの数には困りません。先述の1171タイトルのうちほとんどすべてが小さな会社のゲームです。

規模が小さいからといって、見下してはいけません。ゲームの面白さは、アイデア次第です。従来のゲームにおいて、大手の作るゲームの質に勝るとも劣らないインディーゲームの数々を、私たちはいままで見てきたはずです。VRにおいてもそれは同じです。大手が頑張らない以上、VRを支えるのは規模の小さなところになります。

非常に高いクオリティで話題となったVRゲーム、Raw Data。作ったのはスタートアップ企業

そして現在のVRゲームにおける「名作」はほとんどすべて小規模ゲーム会社から生み出されています。現在のVRゲームにおいては、彼らがリーダーです。大手がいなくとも、十分にやっていける可能性を示してくれます。

充実してきた質の高いゲーム

いままでのVRゲームはどれも「VRゲーム」と呼ぶにはクオリティが低く、「VRデモ」と呼ぶのが適切なものがほとんどを占めていました。家庭用ゲーム機やハイエンドPCで高品質なゲームを遊んでいた人は、それでは満足できないでしょう。しかしその状況も変わろうとしています。

初期にも、まともに遊べる質の高いゲームはありました。Final ApproachRaw Dataなどです。しかし絶対数が少なく、VRデバイスを買った人を満足させられるかというと、必ずしもそうではありませんでした。10万円の機械を買ってまともに遊べるゲームが1本や2本程度というのは、つらいものがあります。

今では少し事情が違います。ほんの少しずつではありますが、質の高いゲームが増えてきています。

例えばArizona Sunshineは素晴らしいVRゲームのひとつです。いわゆる「ガンシューティング」が多いVRゲームの中で、本格的な「FPS」を持ち込んだゲームです。非VRゲームにおいてはありふれたクオリティのゲームかもしれませんが、その「ありふれたゲーム」が不足していたVRゲームにおいては、天の恵みのようでした。

他にも音楽ゲームのBeats Feverも素晴らしいゲームです。両手に持った棒で、音楽に合わせてやってくる球を受け止めるゲームです。Audioshieldのフォロワーですが、譜面を自動生成していたAudioshiledと比べ、音楽にノりやすくなっています。

正直なところ、これでもまだ質の高いゲームが十分にあるとは言えません。しかし、状況は確実に改善されつつあります。「オススメのVRゲームを教えてよ!」と言われても答えに困っていたVR初期に比べれば、大きな進歩です。

それでも良いゲームを探すのには非常に苦労する

それでも玉石混交の中から良いゲームを見つけ出すのには苦労します。「玉石混交」というと聞こえがいいですが、実態はゴミ漁りに近いです。「そんなの普通のゲームでも同じじゃないか」と思うかもしれませんが、あまりよろしくないゲームに出会う確率が、VRゲームでは段違いに高いです。購入するゲームには気をつけましょう。

十分に情報収集すればいいと思うかもしれませんが、VRはその話題性とは裏腹に、個別のゲームについてはあまりメディアは取り上げません。なので、悲しいことに、自分の足でゲームの情報を探しまわるハメになります。家庭用ゲームの情報を探すのに既存メディアに頼りすぎていた面もあるので、たまにはこういうのも楽しいのですが。

情報収集の方法としては、基本的にはSteamのVRのページを毎日確認していました。新しくリリースされたゲームはできるだけすべてチェックし、今は何が売れているのか確認し、近日リリース予定のゲームがあればそれも見ていました。その中から月3-5本程度に絞って毎月買っていました。苦労はしましたが、ある程度は詳しくなれたと思います。

Steamのランキングは非常に参考になる

VRゲームについて取り扱っているブログも何件か発見しましたが、あまり詳しいレビューなどを書いてくれていないことが多いので、参考にはなりませんでした。自分が発信側に回ろうとしたこともあるのですが、あいにくレビューというものを書くのが苦手なので、結局は断念しました。この記事だけで勘弁してください。

それはそうとガンシューティング多すぎ問題

VR初期のタイトル不足を支えたゲームのひとつに、Space Pirate Trainerというものがあります。これはウェーブ型のスコアアタックを主とするガンシューティングで、シンプルで出来がいいことから高い評価を集めました。

ですが人々は次第に満足できなくなっていきます。より高度なゲームを求め出すのです。ちょうどそういった時期にリリースされたのがRaw Dataでした。Raw Dataは、より本格的なガンシューティングで、面クリア型となっています。VRの特徴をこれでもかというほどに活用したゲームで、非常に高く評価されています。

その後も次々にガンシューティングが発売されました。Serious Sam VRBullet SorrowSairento VR、……などなど。どれも非常によくできていて、文句のつけようがありません。

VRとガンシューティングの相性は良く、操作も直感的で、抜群の没入感を得られます。人気ジャンルのひとつとなるのは必然と言えるでしょう。

VRとガンシューティングの相性はバツグン。だがそれにしても多すぎる

……しかしそれにしても多すぎます。一時期はSteamのVRゲーム売り上げランキング上位が、ほぼガンシューティングで埋まっていたこともありました。VRと相性が良く、売れ筋のジャンルで、非VRゲームのFPS/TPS人気とも繋がる、となればどこもこぞって作りたがるのはわかるのですが、ガンシューティング一色に染まってしまうのは少し悲しいところがあります。

VRは様々な可能性を持つ技術です。ガンシューティングだけで閉じてしまうのはもったいないなと感じます。

VR専用ゲームだけでなく、VR対応ゲームも

世の中にはVR専用のゲームだけでなく、既存のゲームをVR対応にしたものもあります。そういったゲームは、VRの機能を必ずしもフル活用するわけではなく、HMDとヘッドトラッキングのみに対応しているなどということがあります。限定的な対応にはなりますが、それでも没入感を高めてくれることには間違いありません。

例えば人気タイトルのARK: Survival Evolvedは、Oculus RiftのみですがVRに対応しており、ゲームパッドなどとあわせてゲームを遊ぶことができます。他にもElite DangerousProject CARSなど、多くのゲームがVRに対応してます。

VRに対応しているゲームのひとつ、Elite Dangerous

これらのゲームでは基本的に通常のコントローラやキーボードを使用して操作するため、本格的なVR体験はできませんが、HMDによって得られる臨場感は素晴らしいものがあります。

こういったVR対応ゲームを選ぶメリットは、ゲームの基礎が非常にしっかりしているということです。VR専用ゲームでは、VRの話題性だけに頼りきった非常に雑な作りのゲームが散見されますが、VR対応ゲームはそもそもVRを前提としていないため、VRがなくとも楽しめるようきっちり作り込まれていることが多いです。VRの真価は味わえませんが、比較的安定した面白さを提供してくれます。

VR専用ゲームで質の高いものを探すのは結構疲れますし、たまにはこういったものに手を出してみるのもいいかもしれません。

気軽に楽しめる360度動画。VRゲームより人気?

ゲーム以外にもVRコンテンツは存在します。例えば360度映像はVRのメジャーなコンテンツのひとつです。VRHMDがなくとも、スマートフォン向けの簡易VR機器があれば閲覧できるので、気軽に楽しむことができます。

360度映像では、GoogleのPearlという作品が有名です。これはViveなどのVRHMDで楽しむこともできますし、スマートフォンなどでも楽しむことができます。他にもDiscovery ChannnelもDiscovery VRとして360度映像を提供しており、私の好きな番組「怪しい伝説(Mythbusters)」などを見ることができます。

Steamにも映像作品はいくつかあり、theBluNEKOPALIVEなどが有名です。またPlayStationVRにおいてもFGOVRなどが提供される予定があります。VRにおいて、360度映像というのは一大ジャンルとなっているのです。

しかし、杞憂に終わればいいのですが、どうもゲームはあまり興味をもたれず、360度映像は人々の興味を引くことに成功している気がします。もちろんVRはゲームのためだけのものではないのですが、ゲームが好きな人としては悲しくなります。

360度映像ならスマートフォンユーザーも巻き込めるので作りやすいという事情があると思うのですが、VRゲームよりこっちの方がメジャーになりそうな勢いがあります。そうなるとVR=360度映像、となってしまって、ゲーム用途としてのVRはあまり発展しないのかな、などと悪い方向へ考えてしまいます。

360度映像界隈は定期的に盛り上がっている印象があるので、VRゲームも頑張ってほしいです。

万人にオススメできるものではないが、去年より改善

VRはハードウェアとソフトウェア両方の問題を抱えていると前回の記事で書きましたが、ソフトウェア面の問題は徐々に解決してきているように思います。ハードウェアについても、今後新しいデバイスが出るにつれ、改善されていくでしょう。VRの未来は明るい、とまでは言えませんが、以前ほど暗くはないと思います。確実に去年よりかは改善されています。

しかし万人にオススメできるというわけではありません。相変わらずハードは高いですし、まともなソフトを見つけるのには苦労します。ですがそれでもなおVRの世界に足を踏み入れようとするのなら、もう止めはしません。もはやVRは苦難のみで満ちた世界ではありませんし、ある程度の覚悟と忍耐をもってすれば、十分に楽しめるはずです。

VRの今後がどうなるかはわかりませんが、火はまだ消えていません。新しいVRデバイスも出てきますし、まだ未発売のゲームもあります。それらがどう働くかは全く予想もできませんが、もっとVRが盛り上がることを願っています。

でも私はもう疲れたので、いとまをもらいます

この1年間、毎日SteamのVRゲーム一覧をチェックして、毎月その中から注意深く数本のゲームを選んで、「楽しいゲームでありますように」と願いながら購入し、落胆し、稀に歓喜し、そんな生活を続けていました。

「せっかく高いVRデバイスを買ったんだから」とコンコルド効果的な心理に陥ってたというのもあり、「どうにかして楽しいゲームを見つけなきゃ」と、なかば義務を感じながら毎月ゲームを購入していました。

疲れました。

「今度こそ面白いゲームでありますように」と薄い希望にすがりながらゲームにお金を落としていくのは、神経がすり減ります。しつこくVRゲームを買っていたおかげで、きっとViveと出会わなければ体験することがなかったであろう、新鮮で驚きに溢れるゲームにもいくつか触れることもできました。それでも、疲れました。

なんだかんだ言って、大作ゲームや、家庭用機でリリースされるようなインディーゲームってよくできてたんだな、ということを実感しました。あの「クソゲー」と切って捨てた大作ゲームもよく考えるとゲームとしてはうまく成立していたし、あの「出来が悪い」と言ってしまったインディーゲームもゲームとしては破綻していませんでした。「ボリュームが足りない」と悪態をついてしまった小規模ゲームだって15分で完全クリアできるようなゲームではありませんでしたし、「操作性が悪い」と投げ出しそうになった有名ゲームもスティックを倒した方向にちゃんとキャラが動いてくれるだけ操作しやすい方でした。

素晴らしいVRデバイスを開発してくれたValveとHTC、それにクオリティの高いVRゲームを作ってくれた数々の会社には感謝しかありません。ですがそれ以上に呪詛を吐きたい会社の方が増えてしまいました。

Viveを買って1年経ちましたし、新年度になって生活環境も若干変わりました。なので、そろそろ潮時かな、と。VRゲームから完全に離れることはありませんが、今までのようにガンガン買っていくスタイルではなく、有名になったゲームだけを買っていくという感じになるのかな、と思います。

なので、私のVRゲーム漁りはこれで一旦終わりです。今までありがとうございました。

おまけ:紹介できなかったゲーム

本文中でもっとゲームを紹介しようと思っていたのですが、予想以上に長くなってしまい、だいぶ削るはめになりました。それでもゲームの紹介を削るのはもったいないなと思ったので、削ってしまった分のゲームはここで紹介しておきます。

QuiVrは弓矢を使ったディフェンスゲームです。実際に弓矢を引きしぼり敵を狙い撃ちます。オンラインマルチプレイヤーにも対応しており、複数人による協力プレイができます。

バランスこそ荒削りですが非常に楽しいゲームで、The Labのアーチェリーミニゲームにハマった人ならこのゲームも楽しめるのではないかと思います。しかし残念なことにまだ作りかけのゲームで、なんとステージが途中までしか作られておらず、そこまでしか進めません。もし完成したらまた遊びたいゲームです。

Space Fistはボクシングゲームです。他にもボクシングゲームはありましたが、これを買った理由はタイトルがかっこよかったからです。

実際に体を動かして避けたり殴ったりするのは楽しいものです。しかし敵にはノックバックがあるので、熱中しているとPCの画面を殴ることになります。注意してください。また、体を動かして攻撃を避ける都合上、HMDの重量があだになっているゲームでもあります。

Serious Sam VR: The First EncounterはSerious Samの1作目をVR対応したものです。2作目のThe Second Encounterも出ています。この調子なら三作目も出るのではないでしょうか。

内容はほぼそのままSerious SamをVRにしたもので、気持ちよくトリガーハッピーすることができます。しかしいかんせん元が古いゲームなので、楽しむにはある程度レトロゲームに理解が必要になります。

AudioBeatsは仮想ドラム(?)を叩く音ゲーです。これもAiduishieldとは違い自動生成ではないので、リズムに乗りやすい作りになっています。

物理フィードバックが乏しいので少しプレイしにくいのと、純粋に難易度が高めなのが難点です。音ゲーマーにとっては簡単なのでしょうけど。